食糧危機、戦争、感染症 その2

ペンギン堂の飯島です。意見は私個人のものです。

寒い日が続きます。その一方で、少し気温が上がってきたりと定まらない天候の日々が続いています。体調管理が厳しいのと、来年の気象状況はどうなのか気になるところです。

小津映画に感じる戦争

今週は小津安二郎の映画を観る毎日です。今年の12月12日は、小津安二郎の生誕120年、没後60年にあたり、様々なイベントが企画され、小津監督の映画も上映、衛星放送での放映などが続いています。

一度録画しておいた『東京物語』を消してしまっていたので、この機会に早速録画しています。

小津監督は律儀にも60歳の誕生日にこの世を去っていますが、それで、10年単位でメモリアルイベントが企画されるようです。この写真も、ちょうど10年前に、東京国立近代美術館フィルムセンターによる『小津安二郎図像学』という展覧会で撮影したものです。

秋刀魚の味』のラストシーン近く、娘の結婚式の帰りに笠智衆一人バーに入るところの飲み屋街の、小津自身がデザインした看板のセットでした。

私自身は、2014年の1月に京橋の展覧会会場に行っていますが、小津映画ということでは、尾道で、ヴィムベンダースが瀬戸内の写真を撮った、『東京物語』で、葬儀の朝、笠智衆が「今日も暑うなるぞ」とつぶやいた場所に場所に立ってみたりとか、いろいろあるのですが、それは機会を見て、ひとつだけ、ここで語っておきたいことは、今度小津の映画を観て感じることは、いづれも、何らかのかたちで戦争の影を感じるということです。

食料安全保障は大丈夫か?

70年代以降、世界的な食料危機、食料価格の高騰は4回あったとされています。

1回目は73年から74年にかけて、同時にオイルショックがあったので、トイレットペーパーパニックの、そっちの方の記憶が強いですが、アメリカの旱魃で食料価格の暴騰が引き起こされています。食料問題研究会の設置はそのことを受けてだったのだと思います。

2回目は2008年、3回目が2011年、そして4回目が、2022年、世界の穀倉地帯であるウクライナでロシヤとウクライナの戦争が始まったことによります。

1960年に30億人だった世界の人口は2021年には76億人となり、およそ2、6倍になりました。当然食料の必要量も増加することになるのですが、人口増加を上回る収穫量が得られたわけではないでしょう。

ここ20年間の小麦とトウモロコシの消費量の増加は、それぞれ1、4倍、1、9倍でしたが、生産量は、1、3倍と2、1倍と需給はほぼ均衡していますが、それも危ういバランスと言えそうです。耕作面積はこの間ほとんど増えていません。穀物の増産は単位面積あたりの収穫量を増やすという技術進歩や化学肥料の使用などによって実現されたもので、一旦このバランスが崩れるような事態、異常気象や戦争などの勃発で、食糧危機が起きてしまうのです。雨が降るべき時に降らない旱魃や降っては困る時に大雨が降り洪水が発生するなど、まさに七難の事象そのものが、食糧危機を引き起こしてきたのです。

1996年世界食糧サミットが行われてその中で食料安全保障という用語が使われるようになったのですが、今回のロシヤ・ウクライナ戦争でヨーロッパの穀倉地帯が戦火に見舞われているだけでなく、イスラエルハマスの戦争では、海上輸送の安全が脅かされるというサプライチェーンの問題が再び浮上してきています。

食糧安全保障について掘り下げていく必要があるという時期なのに、日本の政治は機能するのでしょうか?