米本位制時代の認識からの転換が必要!

U・R・Iの飯島です。意見は私個人のものです。


「水防法等の一部を改正する法律」の一部施行等について、国土交通省水管理・国土保全局長から各都道府県知事、各指定都市の長、各地方整備局長、北海道開発局長、沖縄総合事務局長あて平成27年7月21日の通知は、改正の主旨がどこにあったかを明確に示しています。


 ひとつは、用語の定義の追加で、私たちにはかなり前からなじみの、内水氾濫の内水を、「雨水出水」として定義し、水防法の目的に明記したことです。このことにより、下水道管理者の協力を都道府県及び指定管理団体が定める水防計画記載することができるようになりました。


 さらに、「水位周知下水道」について雨水出水特別警戒水位を定めること、水位情報及び避難措置の住民等への周知方法、浸水想定区域の早期指定、特に、地下街等の浸水に関する規定の通知など、今ここにある危機についてカバーする規定がうかがわれます。問題は、その具体的取り組みと係る人の意識の問題でしょうか。
 
 今年は、観測史上最大の降雨量という言葉を何回聞いたことでしょうか。まあ、観測が開始されてから、何度も記録は塗り替えられてきたでしょうが、こんなに頻繁に、そして大幅に記録が更新されているのは、やはり、地球温暖化の影響があることを疑問視できなくなっているように思います。
 ということで、今回は、水災害についてもう一重考えを深めてみようという選書です。


地名でわかる水害大国・日本 (祥伝社新書)楠原祐介 著)


 実は本書は、そのタイトルを裏切る(いい意味で)内容で、地名に関する災害とリンクした情報が語られているだけではありません。もちろん、そういう情報はあるのですが、それよりも、水災害に関する、意外に知らなかったことがたくさん語られているところが魅力なんです。
 指摘されてそうだよねと思うのは、たとえば、「地震の予知はまず不可能だが水害は予見できるし、その規模をやや大きめに見積もっておけば、大概の事態には対応できる。問題は政治・行政、いや社会全体が、いまだ”米本位制”時代の認識から切り替わっていないことである。」というようなことです。


隅田川堤防に潜む盲点とは?


 また、「隅田川堤防に潜む盲点」というのも、うーんとうなります。「日本の河川管理は明治二六年の河川法制定以来、高水管理を基本にしている。河床に堆積した砂を浚渫して水位を低く保つ低水管理では、海潮がかなり上流まで遡り、農業用水に悪影響を及ぼす。それに、日本の河川は急流で、内水面航路がほとんど発達しなかったから、河床を浚渫する当面の必然性もなかった。」ということから「洪水防止のためには、堤防を次々と高くしてゆくほかなかった。」というところに、隅田川堤防に潜む盲点が生まれたというのです。それは、堤防をまたぐ鉄道橋の部分が周辺堤防より低いということです。「それに伴い、鉄道線路と鉄橋を高くしようとすれば、橋脚もろとも全部改築する」しかなく、莫大な時間とコストを要するため、結果的に、鉄道橋の部分だけが凹型に低くなったというのです。もっとも近年は、このことに気づいて改修に取り組まれ始めているというのですが。
 また、台風の現在位置と災害の発生場所についても、いろいろなケースがあることを台風一六号が教えてくれました。といっても、それは、1974年、昭和41年の台風16号のことですが、このときは、台風の中心から800㎞離れたところに豪雨被害が発生していました。今年と同じようなケースが、気象データの類似性から起きていたのです。私見ですが、このことは、気象におけるビックデータの活用と人工知能を組み合わせることで、水災害はかなりのところまで予測でき、避難に係る情報もより迅速に発令できるようになるのではとも思えます。それはさておき、さらに近年の注意すべき水災害の一つに「流木災害」があります。著者は、「河川敷というものは、元来は河川の一部で、そこに構造物をもちこむなどもってのほかである。草はともかく、樹木はすべて伐採されるべきである。生木であれ、材木であれ、木材は下流の邪魔になる可能性大である。堰だけでなく、河の流れの邪魔になるものはすべて排除すべし。」と厳しい口調で語っていますが、多摩川岸辺のアルバム」の事象を思うと、そうだろうとも思えますし、河川の一部という河川敷についての発想は、グリーンインフラにも通じるところがあるようにも思えるのでした。




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